新築でなく改修・増築とし、家の中に住み続けながらの大規模改修による二世帯住宅。
この住宅の特徴は、増築の結果生じた分棟が呼応し合う、街のような輪郭である。
新規に増築した部分の外壁は黒く、古い既存部分の外壁は白く塗り込める、という単純なルールで外観を記号化した結果、昔から残る部分は白い家形のイコンとして、黒いボリュームの上で宙に浮いたような不思議な対比を見せる。
また、新旧の折会う象徴的な部分として、鉄骨棟と木造防音室との間のスキマは新しい家の玄関となった。この半屋外的な繋ぎの間は接客に利用されるだけでなく、庭側へ繋がるウッドデッキテラスと一体的な縁側的使い方の他、防音室から車への音楽機材の積み込みなどにも活用される。
アプローチ空間の赤杉の縁甲板による大屋根が、既存の倉庫を含めた新旧の住宅の各棟を繋ぎ合わせ、街並みをまとめる。この屋根により豊かな屋外空間が生まれ、新たな家の構えはより印象的なものとなった。
部分が全体のシルエットを構成する。各代の面影を残しながら、これまでの家の記憶が幾重にも寄り添うような家の形。
こうした緩やかな全体性は、今後また家族の成長と共に行われる新たな成長をもしっかりと受け止めてゆく。
伊勢の静居
所在地 | : | 三重県伊勢市 |
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用途 | : | 住宅 |
竣工 | : | 2009年6月 |
構造 | : | 鉄骨造+木造/改修+増築 |
規模 | : | 地上2階 |
施工 | : | なかむら建設 |
写真 | : | 坂下智広 |
第30回三重建築賞
住宅部門 入選