音響効果が視覚化された防音室
設計:元氣つばさ設計事務所
施工:なかむら建設
竣工:2009年5月
写真:坂下智広
床付近では木毛セメント板の目は完全に平滑に目潰しされ、天井付近に向かって徐々に木毛セメント板本来の姿が現れる。在来の構造・工法による非常にローコストな仕上げを用いながら、抽象性の高い緊張感のある空間が作れないかと考えた。
仕上げ素材の吸音率と部屋の気積により、およその残響時間を計算上求めることは可能である。
演奏者が心地よい残響効果が得られるよう、天井付近の壁に吸音性の高い木毛セメント板を配し、残りを目潰しして平滑面としながら、生楽器の演奏に理想的とされる0.25~0.30秒程度の残響時間となるような素材の面積配分としている。また、最終的にどの程度木毛セメント板を残すかは、施工途中の段階で演奏者に立会いを依頼、実際の残響の様子を確認しながら決定された。
抑制されたスリット状の開口部から落ちる光は、木毛板の壁の素材感を刻々と変化させる。荒々しい木毛セメント板のテクスチャーがなめらかに消えてゆくという、非物質的な表現をとることで、無音の時にはより一層の静謐を感じるような、抽象性の高い空間となった。